ユネスコサロン「日本酒の新しい流れ」

コミュニケーション委員会

12月9日、商工会議所会議室にて吉田元・京都種智院大学名誉教授にユネスコサロンの講話をお願いしました。50名以上の出席者があり、会員以外の参加者も多かった。
先生は、京都大学農学部ご出身で、醗酵がご専門、特に日本酒に造詣が深く「江戸の酒」(岩波書店)など著作も多数。和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて一躍ブームになると共に、日本酒も注目されるようになり輸出も増え始め、ついこの間まで沈滞していた日本酒業界が少し明るくなってきた。
日本酒は醸造酒の中でもアルコール度数がとりわけ高く「酔うための酒」という性格を持ち世界の酒の中でも特異な存在であった。現在の製法がほぼ完成するのは、16世紀半ばの戦国時代で、奈良興福寺を中心とする寺院の酒造りで技術を確立した。
日本酒の味は、「甘、辛、酸、苦」の4つの味の他、うま味も評価の重要な要素になっている。戦国時代から鎖国時代にかけて日本酒に関心を持った宣教師やオランダの商館員がおり、幕末には長崎波佐見産の「コブラン瓶」と呼ばれる白磁性の容器に詰められた日本酒や醤油が遠くヨーロッパまで運ばれるようになった。明治初期には、酒税確保のために酒造業の保護育成政策がとられた。
一方、米を原料としない「合成清酒」の開発が進み、戦中、戦後の酒不足時に大いに貢献した。戦後になり高度経済成長時代には大手メーカーの寡占が進み、味が画一化し評価が下落した。しかし、酒の級別廃止と特定名称酒の登場により、量から質への時代を迎え、消費者も自分の好みの酒を選べるようになった。
最近の新しい流れとして、地方の中小酒蔵の動きが注目される。うま味ある酒が出来る生酛づくりへの全面的な回帰、"協会6号" 酵母の復活と地元産酒米の使用などがある。
また、海外においても、日本酒の味に魅せられた外国人が、自ら酒造りを学び、海外で特色ある酒を生産するようになった事例もある。講演終了後、近くのレストラン「ガーデンハウス」にて、「白雪」江戸元禄の酒、「元禄美人」合成清酒、「菊正宗」生酛大吟醸など先生が選ばれた6本の各時代の特徴がわかるお酒の試飲会を兼ねた懇親会を催し、ほぼほとんどの出席者が参加して楽しいひと時を過ごしました。(本岡)


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