ユネスコサロン
 “異文化考察:隣人愛について”

アメリカの隣人、日本の隣人

 

ユネスコサロンは2月12日、生涯学習教育センター第6会議室において山田ますみ講師を迎えて開かれた。講師は現在清泉、聖心の両女子大で異文化間コミュニケーションを教え、さらに鎌倉ユの理事でもある自称「早口マシンガン・トーク」先生。

先ずは日本人が余り学ぶ機会の無い「開拓時代のアメリカ16世紀〜17世紀」のお話。準備してきたアメリカの地図と資料を元に17年間滞米生活での知識、体験を交え講義は熱っぽく語られた。

山田ますみ講師
主な内容は:

新大陸発見から、開拓時代、そして英国から独立して一国に成長する18世紀半ばまでの270年余りのアメリカ史の幼少期の話。16世紀は、カナダのケベックからセント・ローレンス川を上り、五大湖を横断し、ミシシッピ大河を南下しニューオリンズに到着した計算高いフランスの毛皮商人、テキサス州のリオ・グランデ河に入植した陽気なスペイン人宣教師と軍隊、慌ててヴァージニア州ジェームス川に到着した一攫千金を夢見るイギリス投資家達。17世紀に入って、東海岸は宗教団体到来のラッシュを迎える。感謝祭をつくった開放的なピルグリムス。戒律に厳しい禁欲的なピューリタン。彼らは理想郷を創設するつもりでヘンリー八世への反発から移住。後のハーバード大学を開設する。クエーカー派はペンシルヴァニア州に定住。この様にアメリカ史幼少期の歴史絵巻が見事に展開する。
 時代は現代に飛び、講師の17年間居住していたカリフォルニア州の話:日本全土とほぼ同じ広さを誇る州面積。さらに日本を飲み込む五大湖の広大さは我々の想像を超える。将来、南北を分断されると想定されている地点がカリフォルニア州のサン・ルイオビスポ市。州憲法が全米で最初にスペイン語と英語の2ヶ国語で書かれた点が、文化の多様性を産み、風土、人種、言語、教育方針の全てに万華鏡の様な鮮やかさを添える。移民による豊かな労働力も社会全体の新陳代謝を高めている。
 この様にアメリカ史の生い立ちから始まり、本題の日米における「隣人観」の話と進む。「日本においての隣人とは、隣接する近所の人間を指す。しかしアメリカでは聖書に書かれた隣人愛の隣人を指す。この考えは:1)居住地コミュニティーにおいて発揮され、2)子供の小・中の教育現場で生かされ、3)高校、大学ではアメリカ社会で健全な市民教育として実践されている。これは教会の祈りから出発した共有の意識で国の方針として確立していると述べた。全体として「2時間でアメリカ社会を理解する楽しいサロン」であった。(鴇澤)