平山郁夫画伯による芸術文化講演

  鎌倉市名誉市民記念
 

グローバル化の中の日本 〜東西文化交流の視点から〜

 2008年1月20日、上記の講演会が、財団法人鎌倉市芸術文化振興財団主催、平山画伯を囲む鎌倉の会協力、鎌倉ユネスコ協会後援で開かれました。定員286名の生涯学習センターホールは開場30分で満席となり、溢れた市民はロビーで声を聴くという盛況でした。講演の要旨は次の通り:平山画伯
 浜田淑子さんの司会で始まり、プロフィールの紹介後、インタビューで鎌倉に住むようになったきっかけをお聞きしました。師事した前田青邨先生が高松塚古墳発掘調査の総監修になられて、平山先生は現場責任者に、打ち合わせに都合が良いということで、昭和47年から。また前田先生は88歳で押入れ程度の狭い塚の中に、年齢制限を無視して入られた話、同級生の奥様の方が成績は良くて、いまでは一番厳しい批評家であるという話など、会場を沸かせました。
 100回以上取材されたシルクロードへの最初の旅は、アフガニスタン行き。薬師寺の高田好胤管長と約束した壁画は、薬師寺の開祖の師匠が、平山先生が足跡をたどった玄奘三蔵法師であったことから、取材10年、制作20年の歳月をかけて完成。2000年12月31日に納めた話が続きました。

グローバル化の中の日本
 最近の米国の金融の問題や日本を始め世界の株の暴落振りを見ると、国際化の中で日本がどう生きていくのか、問われています。
 戦後のレジュームからの脱却ということで戦争放棄をした憲法を変えようという動きがありますが、日本は資源のない国でありながら経済的な繁栄をしました。その原因は日本人の勤勉さと技術力もありますが、戦争をしなかったということが大きな要因と思います。
 アジアでは日本は太平洋戦争のとき侵略し多くの犠牲者をだしましたが、西域では日本は迷惑をかけておりません。日本は国連の安保理事国の中で武器を輸出していない国です。

日本は文化面で 国際協力を

 小泉内閣のとき、「海外文化遺産保護国際協力推進法」が超党派の議員立法で成立し、一年かけて法整備をしました。これからは関係部門の情報を集めて、文化面の国際協力が進められます。
 国家の理念として、専守防衛は当然として、日本には平和憲法があり文化面で国際協力をすると、声高に言うべきだと思いますね。
 米国と同盟関係にある日本は米国の軍事力とは別に、文化による国際協力を掲げていけば、文武両道でいいのではないかと思っております。文化の面では中国も韓国も日本は近い関係ですから、もっと仲良くするべきです。
 今年は日中友好30周年と北京オリンピックをお祝いして展覧会を開くために中国へ参ります。また外国人としては初めて絵を迎賓館に寄贈します。5月にはパリで展覧会を開きます。

多様な文化こそ繁栄の道
 文化面で繁栄した時代は、西では古代ローマがあげられます。ギリシャ文化を中核に、北はゲルマンから、地中海沿岸の文化、いろいろな文化を受け入れて繁栄しました。中国を見ると、6世紀から7世紀の唐の時代ですが、シルクロードの文化から、仏教を取り入れ、長安にユニバーサルの文化が集まりました。日本は最盛期の中国の文化を取り入れたので国としても幸いだったのですが、ただ物まねではなく仏教も在来の神道と神仏混合で受け入れているのです。明治になって、欧米の文化がなだれ込んできても、アジアの心を大切にしました。

日本は平和のために仲介を
 日本の国際的立場は、平和を提唱しながら、技術でも経済力でも、いろいろな面で貢献できます。
 インド・パキスタン両国がカシミール紛争をしたとき、奈良で開いたセミナーで和平の握手をさせました。またイスラエルのヘブライ大学とテヘラン大学で展覧会を開いたとき、日本の宗教的寛容さを話して「宗教は人を助けるためにあるのに人を憎むのはおかしいのではないか」と言うと、「その通り」と言ってくれました。

子ども達には本物を
 どの家にも歴史がありますが、子どもは両親や兄弟の背中を見て育ちます。家庭に本を、教養書を、美術書でも世界文学でも知的なものが家に置いてあると、子どもはいつか興味を持ち将来の方向を見つけ出します。いまは殺伐とした社会現象がありますが、日本人は正々堂々と活躍してもらいたい、と結びました。  (文責鴇澤)

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