中部東ブロックユネスコ活動研究大会in甲府

基調講演

まず、作家 江宮隆之氏(元山梨日日新聞社論説委員長)による基調講演が素晴らしかった。日本が韓国を植民地支配して、日本人が韓国人を差別していた100年前に、韓国の伝統的陶磁器「李朝白磁」の美しさに魅せられたことが契機となって、韓国の優れた民衆芸術を日本人に蹂躙されることから守り、またそれを日本に紹介することに身を挺して一生を捧げた無名の人がいたことを熱く語って下さった。

ご当地山梨県出身の淺川兄弟。韓国の文化を肌で理解するために現地で韓国人になりきった生活をして、遂には多くの韓国人に心より慕われるようになった、その感動的な生涯を講師ご自身が小説にされた「白磁の人」は全国高校生作文課題図書にも選定されている。
その国、民族の素晴らしい文化の伝統をよく知れば尊敬し合う隣人関係を築くことができることを実証されたこの兄弟のお話は、互いの文化の理解を通して異なる国、民族の壁を越えることで平和な世界を目指すユネスコの活動に対して力強いメッセージになった。

特別講演

また、大月短期大学名誉教授で富士山博物館名誉館長の田中収氏による特別講演特別講演では、山梨県が静岡県と合同で世界遺産登録に取り組んでいる富士山は、その周辺地域を含めて地質学的にも極めて価値が高いことを大変興味深く学ばせていただくことができた。

お話は、数千万年前に今の中国大陸近くの海底で堆積、陸化し、約1500万年前に日本海の拡大と共に現在の場所に南下した、という日本列島の成り立ちを解説することから始められた。
この列島に、既に太平洋プレートの上の北アメリカプレートとユーラシアプレートがぶつかって作られた、ハインリッヒ・ナウマンがフォッサマグナと名付けた列島縦断大地溝帯があったが、約500万年前から50万年前に北上してきたフィリッピン海プレートがユーラシアプレートに衝突して潜り込んだ結果、実に四つのプレートがひしめき合う世界の中で地質学的に最もユニークで個性的な特色ある大三角形盆地が誕生した。
それが、取り巻く山の一つに富士山を持つこの山梨県地域であるとのこと。
地盤構造のこのような多様性は、この地域の150ヶ所以上の温泉の泉質別効能等に関する「泉源相」の多様性をもたらし、また種々の硬度の軟水のナチュラルミネラルウォーターの産出地になっている、とのご説明に一同うなずいた。

日本ユネスコ協会連盟から

組織部西片副部長と菅野広報室員が、来年で20周年を迎える世界寺子屋運動等のこれまでの活動に加え、地域に密着した活動を通しての国内のユネスコスクールの数拡大への貢献等が今後のテーマとなることを述べ、また昨年度より育成を開始した推進員制度にも言及。
当協会森井理事長は、当ブロックを代表する日本ユネスコ国内委員に新しく選出されたことへの抱負を述べられた。ユネスコ運動推進員からとしては、07年度第1期生である当協会山田(雅)理事と小芝会員がカンボジア研修の成果を中心に報告。
来年の横浜全国大会の青年企画プログラムについては、当協会鎌倉理事が委員長、厚木と鎌倉の両協会ユース会員の代表で構成した実行委員会の4人が基本構想を披露した。 
日本ユネスコ国内委員会の大河内委員からは、ESD(Education for Sustainable Development)の日本語訳をより簡単に「持続発展教育」(従来は「持続可能な開発のための教育」)に改めて、その国内への普及促進に重点的に取り組んでおり、その一環として国内のユネスコスクールを現在の25校から3年間で500校にする目標を設定したこと等が報告された。
最後の事例発表会は、厚木、長野、浜松、甲府のユ協が担当。設立5年目で自主的運営に成長した厚木ユ協青年部の多彩な活動、浜松ユ協の学校教員会員による21年にわたる科学教室活動等、多くの参加者が直面しているユ協活性化への良い示唆を得た。(石田)ユース会員発表
 
 

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