ユネスコサロン

エビが食べられなくなる日

昨年11月28日(日)開催の本年度第2回目の講師は、2007年3月まで東京大学海洋研究所所長をされていた寺崎誠さん。ユネスコの政府間海洋学委員会日本政府代表団団長も務められた等、海洋研究のオーソリティの方から、高徳院客殿の閑静な会場で、同じ一会員の立場でお話を聞くことができた鎌倉ユ協の会員は幸運である。
タイトルの“警鐘”は、ご自身がタイで1973年から4年程度、実際にエビの養殖の研究に携わられたことによる。日本はエビの一大消費国であるが、エビは水産物の中で国内自給率が低くわずか5%。そこで東南アジア等からの輸入に頼っているが、それらの地域ではマングローブの伐採やエビの餌となるプランクトンの減少で生産量が減り続けているのである。エビ養殖の世界規模の発展が炭酸ガスを吸収していたマングローブ林の破壊に連なるとは皮肉な話。
ご専門の海洋研究については、1989年5月竣工の学術研究船「白鳳丸」で世界一周の長期航海で実証的になされたことの一端を紹介。2007年3月の定年ご退職までに約1,500日間乗船されたということであるから大変なご苦労であったと察せられる。もっとも、南極の氷で最高のオンザロックなどという“役得”もあったようでした。その調査で、極海でも暖水性プランクトンが増えつつあることから海水温の上昇、従って地球の温暖化の進行を検証された。
南極の氷を含む氷河は地球上の水全体の約4%。これが少しずつ溶けつつあるが、この全部が溶けるとどうなるか?海水の水位が80m上がって世界中の大都市の大部分は水没する、と「エビが食べられなくなる」で済まない恐ろしい未来を示し、従って我々が本当に真剣に地球温暖化対策に取り組まなければならない、としてお話を締めくくられた。  (石田)

 

 
 

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