第23回鎌倉ユネスコ定例総会特別講演
「シルクロードとバーミヤン仏教遺跡」

前田耕作・和光大学名誉教授は現在、アフガニスタン文化研究所所長、アジア文化・講師の前田耕作教授思想史をご専門とするお立場で玄奘三蔵のシルクロードをそのまま辿る旅をされたという点で当協会初代会長の平山郁夫先生と一体の方、そして何よりも平山先生の文化遺産保護活動の一番の理解者、として尾花理事が講師を紹介。

それを受けて前田講師は、平山先生は「海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律」の2006年の制定とそれを具体化する「文化遺産国際協力コンソーシアム」の設立、更にはシルクロード全体の世界遺産登録運動の立役者、「文化財赤十字」構想の実現を願い続けた平山先生の未完の夢は私たちが受け継ぐべきものとして残されている、と熱く語られることから始められた。

シルクロードについてのお話しは、時間の関係でアフガニスタン地域を中心とされた。紀元前4世紀のアレクサンダー大王の大遠征がこの地にまで及んでいたため、ギリシア風の神殿や劇場、大王を描いたコインなどが発掘されているが、それらにはペルシャ(ゾロアスター教)、インド(仏教、ヒンズー教)や土着(太陽神等)の文化の表現がミックスされている(シルクロード文化の特徴)として、次々と興味深い写真を示された。

最後にバーミヤン遺跡について、玄奘三蔵の「大唐西域記」の中での記述から、西の大仏と東の大仏のタリバンによる爆破前のありし日の巨大な姿から爆破後の無残な現状、そして2002年以来のご自身が深く関わっておられる困難な保全活動まで、詳しく言及された。日本のその地道な活動は現地の人々に感謝されており、今回の東日本大地震に対し「私たちは貧しいけれど被災した日本の復興を応援している」との写真を送ってきてくれたことはうれしい。(石田)

 
 

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