スポットライト
ユネスコの“S”はサイエンス

日本全国にある市民運動のユネスコ協会は、日本ユネスコ協会連盟の指導もあって、運動の中心を教育分野の「識字運動」に焦点を当てているところが多いようです。
UNESCOのSは科学を指していることは、ご存知の通りです。このSの科学の分野は「自然科学」と「人文・社会科学」に大きく分かれて活動していることをご存知ですか。
[自然科学]
わが国が協力しているテーマは四つあります。

1.海洋学の領域では政府間海洋学委員会(IOC)に参加
水産庁はじめ関係省庁・機関(独立行政法人海洋研究開発機構、気象庁、海上保安庁等)と大学「東京大学海洋研究所等」が連携して太平洋地域の海洋学(津波警報システム)、海洋物理学、海洋生物学等、それに海洋観測システムに参加・協力しています。

2.国際水文学計画(IHP)に参加
ユネスコの最優先課題。水文学(すいもんがく)とは、地球上の水循環を対象とする地球科学の一分野であり、主として陸地における水を、その循環過程から、地域的な水のあり方・分布・移動・水収支等を研究する科学。
国土交通省など関係省庁と大学・研究機関が連携して、ユネスコがすすめる国際水文学計画による人材開発、情報交換に関連したトレーニング事業、さらに世界水アセスメント計画に協力しております。

3.人間と生物圏計画(MAB)に参加
天然資源の合理的利用と保全を促進し、人間と環境の関係を改善するために、自然科学と社会科学の基礎を発展させることを目的とした、調査研究及び研修計画であるMABに関して東アジアや東南アジアにおけるエコシステムマネジメント等の基盤調査・調査・訓練事業等を実施、協力しています。
MAB計画では、その目的のために、生物圏保存地域の登録を実施しています。わが国では、4ヶ所(大台ヶ原・大峰山、志賀高原、白山、屋久島)が登録されています。

4.持続可能な問題のための教育
国連は1992年のリオデジャネイロでの「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」。2002年のヨハネスブルクでの「環境サミット」を受け、2005−2014年を「国連・持続可能な開発のための教育の10年」と定め、中心の機関をユネスコに任せた。持続可能な開発をしていくためには環境・貧困・人口の三つの問題を総合的に考えねばなりません。

[人文・社会科学]
現在では生命倫理を重視する科学と技術、人権の助長及び差別との戦い、人間の安全保障、社会変容への対処など横断的なプロッジェクトに参加しています。

1.国際生命倫理委員会(IBC)
生物学や遺伝学の進歩が社会に与える影響を倫理的側面から考察する目的で、1993年に創設。
1997年「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」。2003年のユネスコ総会でヒト遺伝情報の研究、医学分野での利用・研究、医学分野以外への利用に関する基準として「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」が、2005年「生命倫理と人権に関する世界宣言」が採択された。
今後は「人クローンの国際ガバナンス」に関する検討を進めていくことでしょう。

2.科学的知識と技術の倫理に関する世界委員会(COMEST)
科学的知識と技術の倫理に関する助言、智と経験の交換のための「場」、科学的コミュニティ、意思決定者と公的機関の対話の促進などを目的として、1997年に設立された委員会。

3.社会変容のマネージメント(MOST)
社会科学部門の中心的事業です。グローバリゼーション、都市化、多民族・多文化社会、人の移動等による社会の変容に関する研究、政策形成との連携を目指して1994年に設立されたプログラムです。

4.アンチ・ドービング条約「スポーツにおけるアンチ・ドービングに関する国際条約」とアンチ・ドービング活動の啓蒙
「アンチ・ドービング」とは、スポーツ固有の価値としての「倫理観、フェアプレー、誠実、健康、優れた競技能力、人格と教育、喜びと楽しみ、チームワーク、献身と真摯な取り組み、規制・法規への敬意、自他への敬意、勇敢さ、共同体・連帯意識」を損なう不誠実、社会悪、不健康な行為、過度な使用により競技選手の健康を害する恐れのある薬物の使用を禁止するものです。 (鴇澤武彦)

 
 

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