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原発使用済み核燃料の資産価値

7月21日テレビ朝日のモーニングバード「玉川徹が電気料金のカラクリを独自調査」を見て驚いた。次の2点が指摘されていた。
@電力会社の利益は総資産の約3%になる仕組みになっている。
A総資産には原発から出る使用済み核燃料もふくまれる。
@の是非も重要であるが、主にAについて考えてみたい。

使用済み核燃料に資産価値があるのは使用価値があるからに違いない。再処理でプルトニウムとウランが得られるからです。1993年4月着工の再処理工場稼動の目途はついていない。英仏への再処理委託を継続させて、とりあえずはプルサーマル発電(プルトニウムとウランの混合核燃料方式)で、将来は「もんじゅ」技術の成就を待ってプルトニウム専燃発電の高速増殖炉で、原発を継続するという核燃料サイクル政策を不動のものにする会計制度が存在する事を私たちは知らなかった。未完で展望もなく経済性皆無の技術を会社経営の基礎にしているのは世界中で日本の原発事業だけではないのか?公益事業といえども未完成の技術を大規模な商用目的に使用することは許されないと思う。

六ヶ所村の再処理工場が本格操業に入れないのは、直下に活断層があるからなのか? 導入したフランスの技術に問題があるのか?
福島第一原発の事故で、原発内にある使用済み核燃料の実態が明らかになった。数千トンの使用済み核燃料を冷却保管できる六ヶ所村のプールには日本中の原発からの搬入が続いている。保管能力を限りなく増やして、核燃料サイクル政策を続行していく事など、もはや出来ないと思う。

使用済み核燃料の資産価値は、合理的に算定される筈はないと思う。その分、電気料金は高く設定された。私達はその料金を払う事により知らない内に核燃料サイクル事業の協力者になっていた事になる。騙されたのだという事は容易だ。だが知らなかった事は私達の責任になるのではないか?

今後「事故調査・検証委員会」の報告がまとまり、新設の「原子力安全庁」が活動開始し、原発見直しの最初の結論として核燃料サイクル政策はやめる事になったら、使用済み核燃料の資産価値はどうなるのか?いうまでもなく、「負債」となります。負債総額を算出して負債処理をする事が義務付けられます。負債額は膨大な額になる。使用済み核燃料だけでなく、核燃料サイクル諸設備の廃棄処分費用、廃炉となる原発の分も入る。

使用済み核燃料の最終処分方法は未確定です。フィンランドは自国分だけは自国内地下深く埋設する決定を行った。米国と日本がモンゴルと交渉中という事が報道された。大規模原発の廃炉処分の実績はない。重要な事業として各国が真剣に取組み、国際協力が強くもとめられる事になります。負債総額はいくらになるのか、その処分にいくら掛かるのか、今は全く不明というしかありません。

東日本大震災後、私達は政府、政党、政治家、官僚、電力会社幹部などの正体を見極めてきた。電力会社が今後持つだろう膨大な負債は、増税と電力料金値上げを不可避にするだろうけれども、それを私達に受容させ負担させようとするならば、日本の政治経済を根底から変革再生させうる国家意志を明白にする事が前提になると思います。

これからの日本政治経済を主導する人物は必ず出現すると信じます。「なでしこJAPAN」は、私達に本物の感動を与えてくれました。植物記は次のように記す。暗示的です。「なでしこは基部を互いに相接して茎を抱き、力強い関節を形づくり成長する」。
(渡部研自)

 
 

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