ドナルド・キーン氏 鎌倉を語る


鎌倉ユネスコ後援事業のキーン氏を迎えての基調講演とシンポジウムが10月29日(土)、鎌倉生涯学習センター・ホールで開催され280席の会場が入場開始と同時にほぼ満席となった。

松尾市長の挨拶に続き近藤文化庁長官のビデオメッセージがあり、基調講演「私と鎌倉」と題して、キーン氏の話となった。

要約すると、キーン氏が日本文化に傾倒する切っ掛けは1945年に読んだ「源氏物語」に感動したことから始まる。

この年初めて鎌倉大仏を訪ねた時「満月の光を浴びたあの姿を観た時の感動は生涯忘れられない」と述べられた。
円覚寺・東慶寺や光明寺等の寺も、それぞれに歴史を持ち、自然の環境に恵まれて素晴らしい、と。

続いて鎌倉在住の文化人にも触れ、作家の高見順氏が1945年東京大空襲の後に書いた日記に「戦災に耐え忍ぶ人に対して、共に生き、共に死にたい」と記述していることに強く心を打たれ共感した。
1953年川端康成氏に招待され鎌倉の自宅を訪ねた時のことにも触れ、沢山の作家とも交流が持てたことは嬉しいと述懐された。
休憩の後、兵藤鎌倉副市長から世界遺産登録の経過と今後の見通しについての説明があった。

第2部のシンポジウムでは、まず、ゲストのキーン氏が鎌倉の魅力に触れ「鎌倉は歴史、宗教、自然環境、何れの面からみても素晴らしく資格はあると思う、然し世界遺産に登録されることで鎌倉が安っぽくならないで欲しい」と結んだ。富士川義之氏(元東京大学教授)は世界遺産は鎌倉に限らず世界の公共財産である、鎌倉のアメニティ(快適さ)が登録される事で損なわれることを恐れる。更に佐藤美智子氏(鎌倉ユネスコ会長)も、鎌倉が世界遺産になるかならないかでなく、世界遺産になるべき本当の意味をよく識ることが肝要である、と結んだ。

鎌倉市民の多くがもっと真剣に鎌倉の持つ真の宗教文化や自然の魅力を理解することこそが登録への近道ではないか、と思う。
キーン氏が最後に洩らされた、「鎌倉に住んでいる人が羨ましい、今の素晴らしい鎌倉を護ってください」の言葉は忘れない。

(光永)

 
 

もくじ