ユネスコサロン
日本のエネルギーパラダイム

原発ゼロのエネルギー世界の到来、未来予想

講師:白木正四郎先生

2月19日、白木正四郎先生を講師として九州からお招きし、地熱発電に関する科学・白木正四郎先生環境委員会主催の講演会を開催しました。
先生は昭和23年、福岡生まれ。

早稲田大学理工学部資源工学科卒業、出光興産在籍中に、九州の由布院で地熱発電の為の掘削に成功。

今は九州のRKB毎日放送テレビキャスターとして活躍中。

受講者は、鎌倉ユネスコ協会会員40人、外部から20人の合計60人で、鎌倉市深沢行政センターの第二会議室は超満員の盛況でした。講演は漢詩の紹介から始まった。老子は、地熱を噴き出す谷の精は女性と言う。ユダヤのカバラ教秘法によれば、2000年代は女性の年代との事、従って両者はつながり、2000年代は無尽蔵の地熱利用の年代、となるそうである。

日本の地熱発電
地下2000mの浅い層から原発23基分、4000mクラスの深さから原発40基分、既存の高温の温泉熱源で、原発8基分が見込める。これは日本の誇るヒートポンプ技術を利用したものである。更に高温岩体の熱源を利用する事も可能で、合計して日本の消費電力の2.5倍の発電が、地熱だけで見込める。油田を掘り当てる様に、熱源を掘り当てる事は、失敗の確率も高く苦労するのだろう、と推測したが、そうではない。現在は、掘削技術の進歩が大きく、数千mの地下から更に水平に数千m掘り進む技術が開発された事で、点から面への探索が可能となり、殆ど失敗しないとの事である。更に日本は地熱資源の3要素に恵まれている。@熱がある。A割れ目(断層)がある。B水が中性に近く、有害物質を含まない。いずれの要素も完全に満たしている。
日本は地熱資源量は世界3位であるが、地熱発電の有望性では大変恵まれている。先生は何度も「安心して下さい」とおっしゃる。

これからの短期戦略
原発フェードアウトのシナリオづくりが難しいのだろうか。先ず短期戦略としては、従来の火力発電所にLNGガスコンバインサイクル発電所を増設、および新設して、原発を代替する。ガスコンバインサイクルも日本が世界トップを誇る技術で効率を従来の2倍の60%にできる。一時的に増加する燃料の輸入が問題であるが、どこにも無理の無い戦略である。さらに節電が必要となる期間があるかも知れない。節電こそ安価な代替発電なのだ、と皮肉られた。

中長期戦略では
本格的にパラダイムシフトをするべきで、地熱発電所を新設する。シェールガスと、メタンハイドレートの利用は、発電所としては繋ぎであり予備的である。2月18日の読売新聞と日経に紹介された、シェールオイルは地下埋蔵層が幅広く大陸全体に広がっていて、世界中で掘削できる埋蔵量豊富な資源である。これを活用する事で、偏った石油資源の問題から脱却できる。また、石油枯渇の宣伝にも惑される事が無くなる。インパクトが大きい故に、今このタイミングで、一斉に新聞報道された裏には何等かの事情があるらしい。一方、メタンハイドレートは、日本近海に豊富に埋蔵されている事が、よく知られている。両者共、前述の掘削技術の進歩のおかげで、有望な資源となった。
資源とは、@存在する事、A欲しいと思う物である事、B経済的に成り立つ事、の三つの要因を満たした時にはじめて資源たり得る。地熱、シェールガス、メタンハイドレート、と見ていくと、これ等は充分過ぎる程、資源の要因を満たしている。念の為に経済性の検証を先生の講演原稿から抜粋して紹介する。
「地熱発電料金は7円〜16円。メタンハイドレートと、ガスコンバインサイクルの利用により、火力発電も価格を下げる事ができる。何よりも燃料の輸入依存を極端に減らす事ができる。日本は、地産地消可能な、発電大国に変身できるのである。これは日本の経済、外交、国際的地位向上、に強烈なインパクトを与える。一方原子力発電は、安全強化、事故補償等の為、30円とも40円とも試算される危険なもので、もはや資源価値を失った」と述べられた。

最後に
「おおまさガス」と命名されたHHOで標記される不思議なガスを紹介して頂いた。勉強したい。自然エネルギー活用に綿々と努力を続けて来られた先生の目には、3.11以降の変化すら、一時的なものと映っている。国益をかえり見ない、既得権益を守る根強い抵抗こそ最大の問題なのだ。原発から自然エネルギーへのすみやかなシフトを目指している、鎌倉ユネスコの活動に対する先生の期待が大きい事が感じられた。 (神澤)

もくじ