東京〜岡山間に相当する704キロも水が流れなくなる「断流現象」が起きて、悲惨な状態になっています。そのために、十年後の渤海は死の海になると言われ、その影響は四方を海に囲まれた隣国の日本が、最大限に受けます。そうなると日本の漁業は壊滅的な打撃を受けます。  かつては中国の穀倉地帯といわれた黄河下流域ですが、このように水不足で今や見る影もありません。そのために2000年以降、中国は食料の輸入国になりました。食料輸入大国の日本にとって、隣国の水問題は大問題であり、非常な脅威だと言えます。
中国の国家プロジェクト「南水北調」  
そこで水不足に悩む中国は、国家戦略として「南水北調」の国家プロジェクトに着工しました。これは南部を流れる長江の豊富な水を運河やトンネルを掘って、水不足の北部へ供給する、「現代の万里の長城」と言われる壮大なプロジェクトです。  このように水の絶対量が不足している中国ですが、さらに深刻なのは、下水道の整備や汚水処理の技術が進んでいないためにおこる工業排水や生活廃水による汚染です。長江支流の沱江では、中国最大といわれる水質汚染事件が2004年におこり、上下水道が使用不能になって、100万人の飲料水が枯渇し、川下の企業の多くが操業停止に追い込まれる惨事がありました。このような水や土壌の汚染が中国全土を覆っています。
環境問題に国境はない 
 中国の環境破壊は大量の水質や土壌汚染だけでなく、大気汚染も生み出しています。例えば西部大開発の重点都市である「重慶」の空は薄暗く、世界ワーストワンの大気汚染が進んでいます。これら大気汚染の影響で中国全土の三分の一が、酸性雨の影響を受けていると言われています。  今年3月には黄砂が大発生し、中国本土のみならず日本各地も黄砂に覆われて視界がかすみました。黄砂と同じように中国の大気汚染による酸性雨が日本に降り注ぎ、森林を枯らし、土壌を汚染して、我々の飲料水を汚染しています。このように隣国・中国の環境破壊の悪影響を直接受ける日本にとって、中国国内の環境問題は日本の環境問題であり、まさに「環境問題に国境はない」のです。
日本の環境技術をODAに
  経済的に勃興する中国には、日本のODA(政府開発援助)は卒業!となりましたが、世界の最先端を歩んでいる日本の公害防止技術の提供や環境破壊防止の援助は、今後も一層活発に行うべきでしょう。その一つに、私も2003年から取り組んでいる砂漠化防止のための植林事業があります。環境問題、水問題もまた、ユネスコが取り組んでいる活動分野であることは、皆さんもご承知のとおりです。私は、植林事業に限らず、他の多くの事業分野で中国の環境問題に取り組み、環境技術を通じて日中友好交流の推進に努力したいと願っています。  今年は日中国交正化35周年、遣隋使派遣1400年の年です。環境問題で揺れる中国ですが、一方、観光で中国を訪れる日本人は年間400万人、逆に日本を訪れる中国人は100万人と予想されています。そこで訪中した場合でも物見遊山だけの観光でなく、中国の活況や環境面で悪化する現況、日本以上に著しい都市と農村の格差など中国の現実に目を向け、学習する必要があるのではないでしょうか。
 (中馬弘毅事務所発行「なにわのきずな」2007年5月号より)


大阪ユネスコ協会 役員    2007/6


会長     中馬 弘毅    衆議院議員

副会長    山幡 一雄    元大阪市経済局長
        山田  忍     関西ピアノ専門音楽学校校長
        河田 悌一    関西大学学長      

理事     綛山 哲夫    大阪府教育委員会教育長
        永田 祥子     大阪市教育委員会教育長
        是永  駿      大阪外国語大学 学長
        大塚 義文    朝日新聞大阪本社編集局長
        芝野 博文    大阪ガス(株)社長
        津田 和明    (財)大阪観光コンベンション協会 会長
        高木 嗣郎(新) (株)大林組専務取締役本店長
        藤沢 誠一    (財)大阪城ホール理事長
        室町 鐘緒    (株)三井東京UFJ銀行名誉顧問
        奥田  務     (株)大丸代表取締役会長
        柴田  稔    東洋紡績(株) 相談役
        石橋 三洋    日本生命保険(相)副会長
        堂元  光     日本放送協会大阪放送局長
        末岡 祥弘    大阪YMCA総主事
        平井 夕紀美  大嶽筝曲学院相談役
        霞流 良子    北区更生保護婦人会 役員
        大川  均    大阪ユネスコ日本語教室代表

常任理事  武田 伸樹    大阪ユネスコ協会事務局長

監事     金村 義夫    大阪司法書士会監事

顧問     太田 房江    大阪府知事
        関  淳一    大阪市長
        金森 順次郎  (財)国際高等研究所 所長
        野村 昭雄    大阪商工会議所会頭
        橋本  守    日本国際連合協会関西本部長



    

私が英語を習い始めたのは、皆さんと同じ中学生になってからです。当時、私はわくわくいながら英語の勉強をしていました。英語を身につけると、言語も文化も違う外国の人たちと直接会話ができます。そんな期待感と未知なる世界への憧れとで一杯だったのです。
 そんな中、英語の教科書に載っていたある写真に衝撃を受けました。それはハゲワシがまるで獲物を狙うかのように飢えて横たわる少女を見つめている写真でした。その頃は、どこの国でも私たちと同じような生活をしているものと思っていましたから、戦争や貧困で毎日生きるか死ぬかの生活をしている人がこの世にいるなどということは全く知らなかったのです。
 私の中の何かが大きく動いたようでした。それ以来、私は貧しく苦しい生活をする人たちの力になりたい、彼らの生活が向上するよう手助けをしたいと思うようになりました。
 しかし、中学三年生の進路相談で、私が両親に「将来国際協力の道に進みたい」と心の内を打ち明けた時、両親は猛反対しました。それもそのはず、私の両親は耳が全く聞こえない障害者だったからです。両親は私に、将来自分たちの面倒を見てもらうつもりでいました。なのに、その私から突然国際協力などということを聞かされたものですから、びっくりするのは当たり前です。両親の目には、私が親を捨てて、日本を捨ててまで外国に思いを寄せる親不孝者と、映ったようでした。私は心の中で叫びました。自分は日本を捨てたわけではありません。親を捨てたわけでもありません。ただ、世界には貧しく苦しい中を必死に生きている人がいるのだという事実を知った以上、私はそれを見捨てることが出来なかっただけなのです、と。
 その場で両親を説得できなかった私は、両親の期待と自分の思いの二つを、どうにかして一つにすることがでかないものかと悩みに悩みました。そんな時に、ハッとひらめいた過去の体験がありました。
 小学生の頃、障害を持っていた両親に連れられて私はよく手話サークルなどに行き、いろいろな障害を持つ方々と触れ合う機会がありました。その中に、障害者による障害者のための国際交流というものがあったのです。その当時は外国なんて何の興味もなく、むしろ人種の異なる人たちというものは奇妙でなんだか恐ろしく思っていましたから、その国際交流とかいうものの集まりには親から嫌々行かされていたような記憶があります。

環境技術を通じた国際貢献・国際交流
         〜日本と中国の場合〜
            大阪ユネスコ協会 会長
 中馬 弘毅
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その他 2007
  ある時、名もしらぬスペイン人の方々と海遊館へ行くことがありました。彼らは私の両親と同じように、耳の不自由な障害者でした。彼らはまだ小さな子供の私に興味・関心を持って、愛想よく目を輝かせながらたくさん話かけてくらました。私は自然と笑みがこぼれ、肩に入っていた力も抜けるとともに、それまで持っていた、外国人に対する漠然とした不安がこの時になくなっていったのです。人間は人種や言葉が異なっていても、また障害があるなしに関係なく、喜怒哀楽といった心に関わる部分はみんな同じなんだということを実感した経験でした。
 この体験を思い出した後、調べてみると、留学や国際交流を望む障害者への支援をしている団体が幾つもあるのがわかりました。また、発展途上国などには障害を持った子供たちの学校が少ないこと、日本の手話を学びたい外国人もたくさんいることなどもわかりました。これらをもとに、障害を持った人たちに国際交流のすばらしさを伝え、今以上に広い世界に目を向けてもらうのが自分の進むべき道ではないかと考えるようにないました。そこで両親に、自分は大学で福祉を学び、将来障害者の国際交流の道で活躍する人間になろうと心に誓ったこと、そのために国際科のある高校に進学したいということなどを伝え、両親を説得することができました。 
 国際文化科のある泉北高校に進学して、新たな世界が広がりました。二週間にもわたるオーストラリアでの言語研修、JICA主催の国際協力高校生セミナーなど、他の国の人々と交流する機会がずいぶん増えたのです。これらの経験を通して、国際理解とは、その国のことを知識として知ることではなく、実際にその国に行って、その国の空気を肌で感じ、その国で暮らす人間と、心と心で交流することだということがよくわかるようになりました。
 最近、発展途上国に行った人から聞いた話では、街で障害者を見ることが少なかったということです。障害者は自宅に閉じこもって、なかなか外に出られないというのが現状ではないでしょうか。
 豊かな日本。まだまだとは言え、バリアフリーなど障害者支援を進めている日本。この国に住む私たちが、国内だけではなく、国際的にも障害者を支える手をさしのべていく必要があるのではないでしょうか。私もその支援者の一人として生きていきたいと思います。
 ・私にとっての国際協力  
       大阪府立泉北高校  山本 侑加 

 
平成18年度「国際理解・国際協力のための高校生のスピーチコンテスト」最優秀作品
(主催大阪ユネスコ協会、大阪府教育委員会)
水不足で、砂漠化が進む中国
 中国には長江や黄河などの大河が横断し、緑豊かな大地が全土を覆っていると錯覚しがちですが、中国の水資源は世界平均の四分の一しかありません。特に青海省に源を発し、渤海に注ぐ中国有数の大河・黄河流域は、1997年の旱魃で年間の半分以上の226日の間、