さいたまユネスコ協会設立 主旨

 

1990年は国連が決議した国際識字年です。以後、読み書き計算のできない人々(非識字者)を無くそうという運動が世界的に始まりました。世界の人口64億人のうち、15%の10億人もの人々が非識字者として居ます。その74%がアジアに、20%がアフリカ、5%が中南米に住んでいます。

文字が読めないためにミルクと農薬を間違え、我が子を死なせてしまった母親、文字が読めないために地主から高い金利で、お金を借り、土地を取り上げられた農夫、数限りない悲劇を生んでいます。

また、読み書き・計算が出来ないために安定した職が得られず、収入が少ないために教育が受けられない、といった貧困の悪循環から抜け出せずにいます。そして、この悪循環を断ち切ることができる最も有効な方法が、読み書き計算する能力を与える識字教育であると考えます。

また今後50年で人口は倍の100億人になろうかと予想され、人口抑制の問題が提起されています。その人口過剰は地球規模での食料資源、ひいては自然環境破壊問題へとつながっていきます。その解決は教育の普及に在るといわれ、その前提である識字教育は地球規模での諸問題解決の根本になるといえます。

 

ブラジルの世界的な識字教育の権威であるフレイレ博士によれば「教育とは基本的人権である」言わしめています。我が国では憲法で義務教育を逆に保障されています。人間が人間として最低限、人間らしい生活をする権利。それは、最低限の衣・食・住であり、最低限の医療を受ける権利で有り、最低限の教育を受ける権利であると考えます。その最低限の権利さえ守られない人々がいまだ、この地球上に10億人も存在してるわけです。

世界の富・財産の80%を地球の人口の20%の人々が所有し、その資源・エネルギーの70%を消費させています。我々日本人は正に、飽衣暖食、その20%の中にどっぷり漬かっている訳であります。

そうした世界のアンバランスのなかで、政治・宗教を越えて人道主義にのっとり、微力ながら人類の福祉に貢献しようとするものであります。

 

(社)日本ユネスコ協会連盟では、海外の識字率の低い国々に識字教室の設立・整備、教育設備・教材の購入、また教師・指導員の養成等、資金援助を通じて、学校に行けなかった子供達への「学びの場=寺子屋」を世界各地に普及させ、識字問題の克服を目指す「ユネスコ世界寺子屋運動」をおこなっています。

 

この協会はユネスコ世界寺子屋運動の一貫として以下のプロジェクトを中心に活動をしていきます。

@奨学里親プロジェクト

海外の貧困に因る未就学児童への初等識字教育支援。里親としての支援者と里子としての児童を募集し、マッチングしてマンツーマンでの援助と交流を行う。

 

A寺子屋建設プロジェクト

書き損じハガキ回収キャンペーン

国内の市民又は団体より未使用ハガキ及び未使用テレホンカードを募り、海外の識字教育支援を行う

B国際理解のための啓蒙活動

里親プロジェクトの手紙の翻訳ボタンティアを対象に、また小・中・高校の総合的学習の時間での講師派遣活動をとおして展開する。


ユネスコ憲章の一説に「戦争は人の心の中に生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない。」とあります。

他国に、自分を学校に通わせてくれた里親が住んでいる。世話している里子が学校に通っている。共に活動した友人が生活している。知人がいる。我々はその目の前に浮かぶ顔、姿に、「心の中の平和の砦」を重ね合わせます。

従来より、援助の行為は支援先にての成果を中心におこなわれてきましたが、この法人は支援者側の意義と満足をも特に配慮した運動をめざします。

昨今の国内での家庭・学校教育の現状から、特に、小・中・高等学校の子弟をもつ多くの父兄を里親の対象として希望します。彼らの子弟が自分と同じような年頃の異国の兄弟姉妹との交流を通して、わが国の豊かさ、恵まれた境涯を感謝すると共に、ボランティア体験をしてゆきます。親子して現実の彼我の違いを認識し、身近に国際理解を深めながら負担の割に手ごたえのある国際貢献をしてゆくことを期待します。

更に、小・中・高等学校において2002年より実施される文部省の学習指導要領では「総合的な学習の時間」が設けられますが、支援をとおして、国際理解教育の分野で積極的に協力をしてゆきたいと考えます。

具体的には小・中・高等学校のクラス単位で教師と生徒が協力して書き損じハガキを集め、その資金で1人の里子を支援する。国際協力を通して、更に里親・里子のクラス単位で生徒たちが国際交流をしてゆく。子供たちがボランティア活動を体験しながら、双方生徒にとって正に生きた国際理解教育の場として活かすことができるのではないかと考えます。

地域の生涯学習における国際教育の一翼として、広く市民に、負担が少なく「お互いの顔の見える」草の根の国際交流に、「平和の砦」の構築を実践してゆきます。

 

この協会は、ユネスコ世界寺子屋運動の一貫として、日本からの援助を必要としている多くの人々の存在を、また国内では少額な支援でも、現地ではいかに大きな援助に成りうるかを啓発し、支援者を埼玉県内外の市民、団体及び法人を中心に募ります。そして海外の識字普及と市民、団体及び法人の支援活動をとおして、特に「お互いの顔が見える国際理解と交流」を目指し、国際平和と人類の福祉の促進を図ります。

 

             2000年5月8日

 

さいたまユネスコ協会

会長  本多 隆

 

 

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