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平成12年3月31日

発行/佐野ユネスコ協会 発行者/荻野高次 編集/編集委員会
事務局/佐野市堀米町3698−4 亀田宮吉方 TEL0283−23−3345

「主な内容」
第五回安佐新人演奏会 町の文化遺産を伝えよう(2)
佐野の歴史と文化を守るために 二柱神社の絵馬と彫刻群
日光二社一寺と日光ユ協との交流 ユネスコ教養講座
新春の集い トピックス

盛り上がった若さの演奏
 「第五回安佐新人演奏会」

 佐野ユネスコ協会主催による第五回安佐新人演奏会が昨年の10月16日佐野市文化会館小ホールにて開催された。
 新人演奏会は音楽大学を卒業された方、また一般の方で楽器や声楽に親しんできた方を
演奏会を通して地元の音楽愛好家に紹介し、その後の地元での音楽活動を支援していくことを目的に、88年に第1回が行われ、今回5回目を迎えた。今回の応募者は高校生から社会人まで10組で演奏種目もピアノ、声楽、器楽とバラエティーに富んだものであった。演奏の方も楽器や曲目の解説入りのものもあって、和やかなうちにも、若さあふれる熱演に会場は大きな感動に包み込まれた。
演  奏  者(敬称略)
ピアノ 加藤千尋 マリンバ 溝口恭子
チェロ 佐藤万衣子 渡辺由美子
伴奏 阿部奈央子 フルート 島田亜由子
ソプラノ 長浜厚子 伴奏 福島慶子
伴奏 阿美敦子 ソプラノ 江原あずさ
アルト
サクソフォン
山根勇男 伴奏 千々岩満喜子
伴奏 金井宏光 バリトン 仁木秀幸
ピアノデュオ 青木千津子&阿久津修子

町の文化遺産を伝えよう(2)
 「天明鋳物」ビデオ完成

 佐野の文化遺産掘り起こし委員会では表記ビデオの製作に取り組み、この度「千年の昔今蘇るー天明鋳物のふるさと」のタイトルで完成することが出来ました。
 内容は天明鋳物の歴史、特色、代表的な作品、製造工程、文化的価値等の解説をしており、学校の教材としても活用しやすいように20分ほどのダイジェスト版にまとめました。
 製作期間中に市制55周年記念行事として佐野市郷土博物館で「天明鋳物里帰り展」が開かれ、東京国立博物館所蔵の重要文化家財の鋳銅梅竹文透釣り灯籠のほか逸品の作品群が一堂に会され、それらを撮影できるという幸運にも恵まれました。
 今回のビデオ製作の目的とするところは、天明鋳物という伝統産業にスポットを当てることにより、時流に会わず、斜陽化し、過去の遺物という固定観念で見過ごしていたものの中に、現在の先端技術によっても及ばない職人の確かな技があり、長年の年月を経て熟成された高度の精神文化が時代を超えて脈々と波打っていることがわかります。祖先が営々と築き上げてきた有形、無形の資産を有効に活用してこそ、郷土独自のオリジナルブランドとして付加価値の高い製品になり、作品として評価される時代となってきています。
ここに本当に町おこし、町づくりの原点があり、今後の発展のヒントがあるようです。尚この度のビデオ製作にあたりましては委員からの種々の意見を聞き入れ、コンパクトな作品としてまとめあげた、ビデオ制作者の店網一夫氏、伝統産業の火を消さず立派に守り続けておられる栗崎二夫氏、若林秀氏のご協力に対し感謝申し上げます。
市の文化振興事業団のタイアップにより市内小・中学校・図書館・公民館等の公共施設にこの作品が寄贈できましたことを喜ぶ次第です。(清水通章 記)

佐野の歴史と文化を守るために

 佐野ユネスコ協会が、平成2年に「家並み町並み写真展」を開催して、行政と市民に都市景観の保存を訴えてから既に10年の歳月が過ぎた。その間、平成8年には建造物についての登録文化財制度が施行され、近隣の各市はいずれも積極的な活用を行っている。
 そもそも25年ほど前、地方の一見ささやかな近代建築にまで保存の機運を覚醒し、全国的な意識の転換を成し遂げたのは、真岡小学校の昭和13年新築、木造の「久保講堂」が保存運動の嚆矢であった。一昨年桐生市長は近代化遺産の保存活用を進めている各地の自治体を糾合して、「全国近代化遺産活用連絡協議会」を発足させた。
 町並みを考える委員会は昨年7月、青木周蔵那須別邸の再生を成功させた工学博士岡田義治先生を講師に「建築文化と保存」をテーマとする勉強会の開催を協賛し、多数の会員が聴講された。9月には「JR佐野駅」が、運輸省関東運輸局「関東の駅百選」選考委員会から、平成11年度24駅の一つに認定された。今駅舎には認定証と併せて、前掲写真展の成果をベースとした万葉浪漫紀行推進委員会製作の小京都観光マップが掲示されている。(山田和夫 記)

二柱神社の絵馬と彫刻群

 二柱神社は、並木町堀之内に鎮座する。高皇産霊神・神皇産霊神を祀るが、明治の神仏分離霊までは、頭が象で身体が人間の、歓喜天(俗に聖天様)であった。この神はインドに起源をもち、祈れば富貴を与えて病を除き、夫婦和合してよい子を授けると言われる。
子宝祈願の絵馬が二枚、拝殿の中に掲額されている。弘化2年(1845)に並木村の亀田ちいが奉納した絵馬には、福の神である大黒天と、その使いであるネズミ、聖天様をイメージする二股大根が描かれている。
 佐野市の文化財に指定された絵馬は、慶応3年(1867) 11月に氏子ら27名によって奉納された。
題材は、建久4年(1193)5月に、源頼朝が富士の裾野で行うた巻狩りから取っている。勢子に追われて飛び出した大猪、逃げまどう勢子、仕留めようとする仁田四郎忠常、馬を走らす武士などが、生き生きと描かれている。絵師は小中村の須藤晏斎で、その子が“近代歴史画の父”と称えら
れている小堀鞆音である。
 社殿は平成元年8月、栃木県の有形文化財に指定された。本殿・幣殿および拝殿を、隙問なく取り囲む彫刻群が、特に優れているためである。向拝の柱に巻き付いた登り竜に下り竜、大人たちが農作業にいそしむ傍らで戯れる子供や犬。木鼻の龍や、唐獅子をはじめとする鳥獣、あるいは花などが、透 かし彫り、九彫りなどで見事に彫ら れているのである。もちろんすべて に彩色が施されている。
 神社の創建は、現存する棟札によると貞享元年(1684)であるが、現在の社殿は天明2年(1782) に改築されている。これら彫刻群も、この年に細工されたものであろう。 作者名が、本殿屋根裏に墨書きされていた。それによると、野州都賀郡富田宿(栃木県下都賀郡大平町富田)の磯部儀左衛門信秀の3世藤原秀重で、23歳とある。しかし、秀重一人の作とは思えない。磯部一門による作品であろう。ちなみに信秀は、江戸神田の著名な彫刻士、後藤正常 の間弟で、作品は県下に広く分布する。(京谷博次 記)

日光二社一寺と日光ユ協との交流

日光には、もう初秋の爽やかな風が流れていました。9月5日に実施された「日光二社一寺の見学と日光ユ協との交流」は、大変時宜を得た楽しい研修旅行でした。
ご承知のように、日光二社一寺は12月に世界文化遺産に登録されました。この偉大・絢爛たる文化遺産に対する認識を新たにいたしました。
ユネスコが標榜した「世界の自然遺産・文化遺産を人類共通のものとし、国際的協力のもとに保護し、未来世代へ引き継いでいく。という平和を基調とする登録の意義をもう一度よくかみしめてみたいと思います。
見学後は、日光ユ協の方々との交歓会を持つことができました。日光ユ協の方々とは、以前に来佐の折に城山記念館にて情報交換し、出流原弁財天周辺の散策などでお顔馴染みになっており、昼食時の話題も弾みました。(遠藤康次 記)

ユネスコ教養講座

本年度も教養講座は会員の輪番制講師によって、各分野の知識を深めることができました。次年度からの講座については、内容や実施日時などを検討し、充実したものにしたいと思います。
本年度の実施内容は次の通りです。
第10回(’99.6.18)「佐野市内の地形、地質」 同部菊次郎
第11回(’99.8.20)「身近な薬草と話題のキノコ」 小野 正弘
第12回(11.19)「食事と健康維持について」中村信
第13回(’00.1.21)「味覚と食品保存」 亀回 宮吉
第14回(’00.2.17)「音楽アラカルト」 岩崎 法子

ユネスコ教養講座第12回より
 「食事と健康維持について」中村信

 本邦では、がん、心臓病による死亡が増え、脳卒中は減少しているものの近年は減少に鈍りがみられる。こうした中、生活習慣病という言葉が広まり、また本県でも栃の葉ヘルシープランが叫ばれている。特に、栃木県民の脳卒中による死亡率は、ここ10年間ほぼ全国1位とワースト記録が続いている現状である。今回の文化教養講座は「食事と健康維持」をテーマとして、統計資料などを用いて行った。
 一日30品目をとる、過食はしない、塩分は10グラム以下など、一般的な内容の確認であったが、国民皆保険という恩恵にあずかっている一方で、健康に努力する個人が不健康な生活習慣の個人の医療費を負担するという現実もあり、生命の尊厳や高齢者介護の問題だけでなく、国民医療費の観点からも、問題を提起してみた。

新春の集い2.12
 角半会館にて

ミレニアムの名に相応しく、東音箭内洋子さんの長唄に岡安祐璃さん、東音柿本淳子さんの三味線で初春の調べを二曲鑑賞しました。また、TOYP大賞を国際青年会議所から受賞された半田好男さんが継続されているネパール識字活動支援のお話や、現地の人々の作品頒布と、今後の活動のための活発な募金もあり、なごやかなひとときを過ごしました。 (野城郁子 記)

トピックス

◆ 半田好男さん「世界TOYP大賞」受賞(国際青年会議所による)この賞は国際交流や医療・福祉・環境などの分野で活躍する若者を表彰するもので、半田さんの場合、子供たちの未来や世界平和、人権に対する貢献ということでした。日本では10年ぶり、4人日だそうです。
◆ 秋山川、菊沢川の清流化運動に露木基金の助成決定日本ユネスコ協会連盟は、故露木寛(元山梨県ユ連会長)の意志を受け継ぎ平和をめざす青少年の活動に助成しています。
今回’99年度下半期は全国で佐野を含めて5団体が選ばれ、 10万円の助成金が交付されました。今後は、自然科学委員会を中心に、河川の水質調査や生物の生育状況調査等を行い、広く流域の人たちに呼びかけ運動を広げていく予定です。
◆ 佐々木淳行著(元内閣保障安全室長)「六男二組の大平洋戦争」が可ヽ学館より発刊本書は、著者が戦前東京麻布の南山国民学校に在学中の、六男二組の担任と生徒との交流を描いたノンフィクションです。
文中、学童集団疎開で佐野市の興福寺を訪れる場面があります。軽妙な文章で楽しく読めます。一読をお薦めします。
◆ 鈴木四郎著「司馬遼太郎伝」近<発刊
佐野市にも「司馬遼太郎を語る」講演等で来られている鈴木四郎さんが、ライフワークとして司馬遼太郎の生涯を調査、研究された成果を、今回単行本として自費出版されます。若き日の佐野駐屯時代も多く取り上げられています。価格は800円で頒布の予定、申し込みされる方は事務局まで。
’99年度世界寺子屋運動
学校キャンペーン報告
募金額 86, 060円
書き損じ葉書 (切手交換額)115,506円
使用済みテレホンカード 3475枚

◇″町の文化遺産を伝えよう″今回2
回目ですが、これからもシリーズと
して続けていく予定です。何か情報
がありましたらお知らせ下さい。
◇佐野にも関係する「六男二組の大平
洋戦争」「司馬遼太郎伝」力才目次い
で出版されます。ご一読下さい。
(亀田 記)