平山郁夫会長のお話「最近思うこと」

総会の第二部として構成された「平山郁夫会長のお話と音楽へのお誘い」の
中の平山会長のお話を要約してまとめてみました。(文責 鴇澤)

「最近思うこと」

 最近思うことは、日中韓の軋みで大きな難題となっていることです。文化の面で軋みを少しでも和らげて誤解がないように努力をそれぞれの立場でやることが大切だと思っております。 

 

昨年のクリスマスに韓国のノムヒョン大統領から招待状を頂き、北朝鮮の高句麗古墳の世界遺産登録に尽力したことで文化勲章を受賞しました。文化の面では民族統一であるということで北朝鮮に尽力したことを韓国政府が表彰したのです。

世界遺産登録成功

 昨年7月、幸いにも世界遺産登録が実現しました。委員会において韓国と北朝鮮の代表が並んで座り、共同作戦をとったようです。高句麗の古墳について、まずイスラエル代表が推薦し、二番目に日本がスピーチ、委員会全員の拍手で登録が決まりました。日朝会談や6カ国会議が行き詰っている中で、文化の面では北朝鮮側はじわりじわりと開放政策を取っているように思います。拉致問題では家族の方々には本当にお気の毒ですが、しかしこの問題を本当に解決しようと思うならば、圧力をかけたり、争うとますますお互いに硬化していくのではないかと思います。 

日本は中国・朝鮮半島から学んだ

 東アジアではかつて同じ文化圏にあった朝鮮半島、百済、高句麗、新羅などの文化を日本の先人たちは学びました。中国に対しては遣隋使、遣唐使を派遣して奈良文化のもとを築く様ざまのものを学んでおります。 昨年の秋、井真成(イーシンセイ)日本人としては初めての墓が見つかりました。19歳で遣唐使節として長安に行き、17年滞在した後、亡くなったのです。時の皇帝玄宗皇帝はその死を悼みお墓をつくりました。その墓誌が、昨年11月私が行ったときに記者会見して発表されました。これを読みますと「若い留学僧が異国の地、唐の都で亡くなった。しかし、遺体は長安の郊外に葬られても心は既に日本へ帰っている」と。中国の年代で開元22年(734年)ですが、その若き僧に従五品上の位を与えました。長安は、100万都市、東の文化の中心でした。その大国が日本の無名の留学僧に敬意を表していたことに驚きました。

なぜ高句麗か

奈良で一番古い飛鳥朝の寺、飛鳥寺という寺があります。この寺は高句麗の僧である恵慈が技師達を連れてきて建立しました。お寺が完成すると全員が帰化し、高句麗から推古天皇にお祝いに金300両を贈っております。その金で金メッキを施したと書かれております。また、日本画の道具、絵の具など紹介しております。日本が飛鳥、白鳳、天平と平安朝になるまで300年間、いろいろ学んだかがわかります。丁度私が北朝鮮から戻ったのが、4月16日で、デモで騒いでおりましたが、日朝関係に、日中関係に、日韓関係にせっかく積み上げたのに、違う波が出てきたような気がします。しかし文化の面ではお互いに尊敬しあっていますので、何を話しても心配はないのですが、次の世代の若い人々が尊敬しあっていくには努力が必要だと思います。

いまイラクでは

イラクの国内では戦争は終わりましたが、後の処理でアメリカも困っており、多くの関係のない一般人にも犠牲者が出ております。日米が同盟国でありながらアメリカが大変困っているときに日本が、人道・経済の復興支援にプラスして文化面の支援をするならば大部違うんではなかろうかと小泉総理に申し上げましたら、審議会を立ち上げ、今月中に答えを出してくださるということで官邸で作業をしております。議員立法でも超党派で立法化して国際貢献しようということです。

これからの計画

今年12月にイスラエルのヘブライ大学の先生をお呼びし、一方ではパレスチナの文化人をお呼びし、多神教的な日本が「和解」についての話し合いを提案しております。まずは京都の国際会議場で討論会をおこない、法隆寺では私が座長になって「イスラエル対パレスチナの文化による話し合い」を開くことになっております。昨年は前段としてイスラム文化を取り上げ、東大寺でシンポジュムを開きました。一昨年はインドとパキスタンのカシミール問題を薬師寺で話し合いをしました。

イスラム教国からの共存アピール

イランのハタビ大統領から連絡があって、ユネスコでシンポジュムを開きたいという要請でした。こうした動きがあるのはイスラム教国がキリスト教国や仏教文化と共存できるんだということをアピールしているのではないかと思います。ヴァチカンのヨハネパウロU世の葬儀にもハタビ大統領は列席しておりました。今年は3月にユネスコ親善大使の会議が開かれました。私はいろいろな人に会って「文化による平和」について提言し続けております。日本においては鎌倉ユネスコの皆さんはユネスコ精神を実践しており、本当にありがたいと思います。こうした気運が日本全体に浸透すると、東南アジアや中国、韓国、朝鮮半島の皆さんの日本に対するイメージが変わるんではないかと思います。

 

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