ユネスコサロン
−鎌倉再発見レポート−

  サロンは、9月9日鎌倉生涯学習センターに53人が集まっての大盛況。講師は「鎌倉朝日」の編集主幹、鎌倉で活躍中の中村藤一郎さん、テーマの“「鎌倉再発見」−その魅力は何か”につき二部に分けて史実に基づいた話でした。

第一部は“底知れぬ人材の宝庫、人が人を呼ぶ、その活用こそが魅力ある街づくりのカギ”。朝日新聞の鎌倉通信局長時代の体験を通じて“鎌倉は特殊地帯で、余人をもって代え難し”という事に気づき、ある記者の“鎌倉の面積は日本一小さいかもしれないが、人材に関しては底知れぬ深さをもっている、こんな都市は他にない”との言を紹介し、数々のエピソードを披露。
 “私の夫は映画なの”が口癖だった田中絹代さん。ご葬儀の際、お棺を担ぐ人が見当たらず、頭の方は中村さんが反対側は仲代達矢氏が抱えて霊柩車に乗せた話、美濃部亮吉氏に都知事四選出馬OKサインをだした大内兵衛氏との興味深い師弟関係。思い出の新聞記事紹介では、昭和48年警察署と市による“古都鎌倉を人間都市に、正月三が日はノーカー運動の開始”、“鎌倉駅表口の三銀行模様替えで夜も明るくなる”と高柳鎌倉表駅商友会長(現鎌ユ協理事)の活躍、昭和51年“古都の滑川、砂押川の浄化にコイ稚魚500匹放流”の記事など。
 第二部は、中村さんの著書「鎌倉・古都点描」を題材にしての話。武士が歴史の主役として地位を固めたのが鎌倉時代。司馬遼太郎氏の「三浦半島記」著書の中から「鎌倉幕府が、もしつくられなければ、その後の日本史は二流の歴史だったろう」との記述を引用。
 平安中期から鎌倉期にかけては政治・宗教が激動の革命期で、貴族的な摂関政治から院政政治、武家政治へと転換。公家・貴族文化に対し、武士や庶民の新しい文化が台頭。その象徴が鎌倉仏教の誕生で、念仏を唱えれば苦しみから救われると浄土宗開祖の法然、その弟子親鸞の浄土真宗、一遍智真の時宗、栄西による禅宗の臨済宗、道元の曹洞宗、日蓮の日蓮宗などが庶民の中に浸透。この時代以降、新たな宗教家や思想家が生まれていない。
 現在の鎌倉にも素晴らしい方々がおり、この人達の「英知」を鎌倉時代のように社会に生かせれば、再発見どころか新しい国造りが見えてくる思いがする…との話でした。
 中村さんより「鎌倉・古都点描」五冊を頂き、じゃんけんの勝者5人がその恩恵に預かりました。この本は、67のテーマに墨彩画家西松凌波さんの挿絵が見事に調和され、古くて新しい鎌倉の魅力を再発見させてくれます。講師の中村さんは鎌ユ協会員、美味しいケーキは山田雅子理事のお手製。その他会員のご協力も頂き感謝します。(田村)