ユネスコサロン「美術オークションの歴史、役割と仕組み

本年度第1回目のサロンは9月27日、大仏殿高徳院客殿で開催された。講師はクリスティーズ・ジャパン顧問の畑中俊彦氏。素晴らしい会場での会員による講演第1号である。畑中氏は情報を圧縮保存したコンピューターの如きかたで、美術オークションの世界の多くの逸話を紹介された。以下は大要のみ述べる。

美術オークションの歴史
クリスティーズ社は1766年、ロンドンに設立された。その成功には三つの社会的経済的背景があった。(1)産業革命とそれに伴う社会改革による富の蓄積。(2)グランドツアーの流行。英国資本家の子弟たちの美術品買い付けを目的とした欧州大陸への旅行。(3)フランス革命。亡命したフランス王族貴族は多くの財宝を英国に持ち込んだ。現代に入り、1985年のプラザ合意後は、日本のお蔭で世界のオークション市場は活況を呈した。21世紀に入ってからは、中心はロシア、中国、インド、アラブ諸国と毎年変わっている。

オークションの役割
処分する物を持っている人のために、買い手を探すのが役割。オークション会社の仲介で売り手と買い手は公開の場で取引。売り手は市場価格を知らなくても、オークション会社の助言により、物の価格を知りえる。

オークションの仕組み
売り手の物を実際に見て過去の取引例を調べ、入札予想価格を付けて所有者の合意を得る。来歴やその作品に関する研究の有無を調査し、研究家の意見を基に真作かどうか判断する。1ヶ月前にカタログを発行。3〜4日前に下見会。一回のオークションに通常180点出品。1品1分位の時間で落札を決める。買い手は1週間後に支払う。このあと、過去のオークションカタログを商品に見立てて実際にオークションを実施。落札の合図には講師ご自慢の象牙の槌が打たれ、8点を8分間で売り切られた。質疑応答では、流失文化財についての質問には、ナチスの掠奪美術品のことに触れ、さらに平山郁夫会長の文化財赤十字構想について、会長から伺ったことが紹介された。(渡部)

 
 

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