寄稿

歴史建造物保全学」をイギリス・ヨークで学ぶ

昨年10月からロンドンとエジンバラの中間にあるヨークで考古学科・歴史建造物保全学を学んでいます。イギリスはナショナルトラストに代表される文化財等のチャリティー活動が根強いことからも分かるように、一般市民の文化や自然美への理解が深いところが特徴的です。現在通っているヨーク大学は今年50周年を迎える新しい大学ですが、同分野においては非常に名高く、理論と実践的な保全を学べる環境が整っています。

そもそもヨークの街は紀元後1世紀からローマ人やバイキングによる侵略、ヘンリー8世による宗教改革の餌食になった歴史を持つことからロンドンについで重要な歴史的な場所である、とヨークの人たちは自負しています。ヨークは中心部が城壁で囲まれ、ローマ人たちがイギリスの拠点を置いていた時とあまり変わらない街の境界線を維持しています。城壁の中はヨークミンスター(大聖堂)を中心に英国中世の町並みが美しく残る建物が所々に並び、この国の歴史を肌で感じざるを得ません。

私の勉強する考古学科だけキャンパスが街中にあり、一番古い建物は15世紀の石造りです。窓の外を見れば、授業で学ぶ歴史建造物が建っているので、学習環境としてこれ以上に最適な場所はないでしょう。もともとはキャンパスの裏に残っている大修道院の廃墟に付属した施設だったのですが、ヘンリー8世によって修道院は破壊され、このキャンパス部分だけが王の滞在場所として確保されたのだとか。イギリスの歴史が凝縮した場所だといえます。

授業の一環として、まだ暖かかった10月、11月は17世紀の農家(文化財登録済)の修復を行いました。20世紀の初めから倉庫として放置されたため、17世紀からほとんど改築されることなく現存する貴重な建物です。壁紙や土壁のサンプルを取り、データを保存してから、モルタルを作って塗ったり、もろくなったレンガや石を削り、タイルで修復したり、様々な技術を学びながら実践しました。

日本では学び始めた学生に直接本物の修復をさせてもらえる場所はないので、イギリスの教育システムの大胆さと「本物」を通じた教育の重要性についても学んでいます。(宮崎 彩)

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