機関誌「ユネスコ」 2021年4月号

特集
 東日本大震災から10年
   子どもたちの教育を途絶えさせないために




これまでの取り組みと被災地のいま

2011年3月11日、東日本大震災が発生。同3月14日、日本ユネスコ協会連盟は支援のための募金窓口を創設した。4月1日には職員による現地調査を行い、現地のユネスコ協会や教育委員会の協力を得て被災校の現状を聞き取り、ホームページやYouTubeで世界に発信した。
 この10年間で累計60億円を超える募金が寄せられ、学校への緊急支援を筆頭に、さまざまな教育・文化復興支援に取り組んできた。活動の全体を改めて振り返り、今後の復興支援へとつなげたい。
 10年間にわたり活動を継続できたのは、被災地の方々、ならびに全国の皆さまの温かいご理解とご協力、そして、地元との懸け橋となってくださった被災地ユネスコ協会のご尽力があってこそ。
 関係するすべての皆さまに、心から感謝を申し上げます。

お礼のメッセージ写真を送ってくれた宮城県石巻市立門脇小学校の皆さん お礼のメッセージ写真を送ってくれた宮城県石巻市立門脇小学校の皆さん

一日も早い学校再開を願って

学校への緊急物資支援

※支援期間:2011年3月〜2012年3月

震災後、4月になっても新学期を迎えられない学校や、体育館や教室が避難所として使われている学校が数多くあった。そのような中、子どもたちが安心して学べる学校生活を一日も早く再開できるよう、最初に実施したのが学校への緊急物資支援だった。幼稚園から高校まで1校150万円の範囲で、144校と2教育委員会に計1億8808万円の支援を行った。
 とくに気をつけたのは、支援物資のミスマッチを防ぐこと。1校1校異なる状況に合わせて必要な物資を聞き取り、支援品に条件を付けず、現地のニーズに合ったものを必要なタイミングで支援した。例えば、宮城県仙台市の中野小学校からの支援要請は、学習ノート1130冊、副教材543冊、くり返しドリル380冊、各教科練習帳・ワーク311冊、あさがおセット、ジャージ、ウインドブレーカー、運動靴、箸・スプーンセットといった物資の数々、それに修学旅行費用や野外活動費などであった。2011年に寄せられた募金は、このような形で1校1校の要請にもとづき、迅速に被災地に届けた。

・釜石市教育委員会よりコメント
震災後、家を失って学区や行政区を越えた仮設住宅などで避難生活を送っている子どもたちがたくさんいました。さらに、瓦礫で通学路の安全が確保できない状況になったこともあり、通学のためのスクールバスがありがたかったです。10年が経ち、仮設住宅がなくなった現在も、子どもたちの通学や、校外学習などの際に市内を走り、活躍しています。

岩手県釜石市に寄贈したスクールバスは、子どもたちの通学手段としていまも活躍中だ 岩手県釜石市に寄贈したスクールバスは、子どもたちの通学手段としていまも活躍中だ


被災地の日常から離れて、子どもたちに笑顔を取り戻してほしい

心のケア・社会教育・コミュニティ再生支援

※支援期間:2011年〜2018年度

地震や津波の恐ろしい記憶、瓦礫に覆われた街の風景、長引く避難生活...。そんな日常で、少しでも子どもたちの不安な気持ちをやわらげ、楽しい時間を過ごしてもらえるよう、企業のご協力のもと、子どもキャンプや子ども絵画展、コンサートなどさまざまなイベントを実施した。また、図書館が被災した地域や、仮設住宅で暮らす子どもたちのためには、移動図書館車などを寄贈。さらに、相撲が盛んな東北の土俵再建には、白鵬関をはじめ多くの現役力士の方々より協力をいただいた。

移動図書館車のほか、コミュニティ図書館の建設や学童保育なども支援した 移動図書館車のほか、コミュニティ図書館の建設や学童保育なども支援した
宮城県の気仙沼市を含む3地域で相撲場を再建。子どもたちが汗を流した 宮城県の気仙沼市を含む3地域で相撲場を再建。子どもたちが汗を流した

祭りの伝承で地域の人びとの心をつなぐ

文化・郷土芸能への支援

※支援期間:2011〜2013年度

東北は郷土芸能が盛んだが、沿岸地域では津波により必要な用具や装束が流失した。「郷土の芸能を救ってほしい――」、そんな被災地の声を受けて支援を実施した。
 岩手県釜石市では、「櫻舞太鼓(おうぶだいこ)」の太鼓や、太鼓を運ぶ車輌、「東前太神楽(ひがしまえだいかぐら)」に使用する山車の塗装などを支援した。また、航海の安全と大漁を祈願して江戸時代に始まったとされる「両石虎舞(りょういしとらまい)」と「片岸虎舞(かたぎしとらまい)」では、津波に流された虎頭・虎幕を復元、保管庫を建設した。
 宮城県石巻市旧雄勝町で600年以上にわたり伝承されてきた「雄勝法印神楽(おがつほういんかぐら)」は、地元の人たちにとって特別な伝統芸能だ。その神楽面の復元、衣装や太鼓のほか、地元の学校で使用する芸能用具を支援。さらに、神楽を通じて地域再生に取り組むようすをとらえたドキュメンタリー映画を制作した。また、世界的デザイナー、コシノジュンコ氏のご協力で「伊達の黒船太鼓」の衣装を制作した。

・葉山神社 千葉秀司宮司よりコメント
雄勝法印神楽は、地元の人たちにとって“ふるさとの音色”。祭りの日は地区に残った人と離れた人たちの同窓会のようになり、皆が同じ思いで1日を過ごせる貴重な機会となっています。迅速に支援をしていただいた神楽を、震災前同様に伝承していきたいです。

・雄勝法印神楽保存会 阿部久利さんよりコメント
支援していただいた面や衣装は、いまも大切に使用しております。また、保存会には震災以降7名の有志が参加しました。神さまが楽しんでおられる庭に、ボランティアを含め雄勝にゆかりのある人びとが集うようすは、宮司のおっしゃるとおり同窓会のようです。

地元の人びとが力を合わせて伝え継いできた雄勝法印神楽 地元の人びとが力を合わせて伝え継いできた雄勝法印神楽

継続的な支援により安心して学ぶ環境を

MFUG・ユネスコ協会 東日本大震災復興育英基金

※支援期間:2011年4月〜2026年3月まで継続予定

震災で親を亡くした小学生から高校生を対象に、在学期間中に月2万円の奨学金を高校卒業まで継続的に支援する給付奨学金プログラムを続けている。これまでに1486名(給付額累計20億7784万円)の子どもたちを支援した。今後も最終奨学生が高校を卒業する2025年度末まで支援を続ける。また、奨学金のほか、学校花壇の再生や、交流プログラム、先生方の心のケアの研修なども行った。本育英基金は、三菱UFJフィナンシャル・グループによるいち早い決断により、このような長期的な支援が可能となった。

・奨学生からのメッセージ
昨年、岩手大学に推薦で合格しました。大好きな科学を極めて、将来は立派な研究者になるよう頑張りたいと思います。いままでの支援、本当に感謝しています。ありがとうございました。(岩手県・高校3年生)

奨学生からのメッセージ

子どもたちが進学によって夢を描けるように
ユネスコ協会就学支援奨学金

※支援期間:2011年5月〜2026年3月まで継続予定

 地震や津波で家や財産、あるいは仕事を失った親御さんにとって、子どもたちの教育費は大きな負担となった。 さらに、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県では多くの家庭が故郷からの退避を強いられた。このような被災による経済的な理由で就学への支援が必要な子どもたち(主に中学3年生)に、月2万円の奨学金を3年間給付する支援を続けている。毎年、寄せられた募金の範囲で支援可能な奨学生数を算出し、3県の中でとくに被害の大きかった沿岸部25市町村から数市町村ずつ順番に支援してきた。これまでに3467名(給付額累計:約23億円)の子どもたちを支援。2022年度末まで募金の受付を継続し、2025年度末まで支援を続ける予定だ。
 多くの方々からの継続的な募金によって、被災地への息の長い教育支援が可能となった。

(企画部:上岡 あい/文化・郷土芸能への支援は企画部:青山 由仁子)





■震災後の日ユ協連の取り組みがわかる 東日本大震災教育復興支援のあゆみ

 詳しくは リンク先 をご覧ください。



■奨学生の声、寄付方法は 東日本大震災子ども支援募金 特設ページ をご覧ください。



■最新の被災地支援については
 「ユネスコ協会就学支援奨学金レポート2019(PDF)」をご覧ください。