公開講座「世界遺産講演会」

講師:文化庁・文化部長 寺脇 研氏

2002年12月21日(土)、御成小学校多目的ホールにおいて、文化庁・文化部長、寺脇研氏を講師に公開講座「世界遺産講演会」が開催されました。寺脇研氏

当日はあいにく氷雨の寒い日でしたが、60名の出席者は寺脇氏の豊富な経験を背景にした熱弁を傾聴しました。以下は世界遺産から文化、教育問題にまで及んだ講演のダイジェストです。

 

日本には11の世界遺産があり、そのの中で登録に私が係わったのが三つあります。

一つは父が鹿児島県の出身であり、県知事から屋久島の登録についての協力依頼があったのが最初でした。当時はバブル経済で県の財政にも余裕があり、行政主導で行なわれました。1993年に鹿児島に行った時も地元の雰囲気は、屋久島が世界遺産になったという実感がありませんでした。

次が広島県の世界遺産です。当時私は広島県の教育長だったので厳島神社、原爆ドームの登録に関係しました。これだけ世界的に有名な原爆ドームを世界遺産にする必要があるのか疑問が残りましたが、当時は日本国内で次々に世界遺産が登録される中、原爆ドームも世界遺産にしなければならないという思いがありました。

世界遺産のめざすもの

本当は、あまり知られていない国の遺跡について、世界遺産として登録し、そのすばらしさを世界中に知らせることにより、その遺跡の保護だけでなくその国の文化の向上や経済に貢献することができる。これこそが世界遺産のめざすものであると思います。

ただ単に「自分たちの地域の遺跡や文化が世界遺産になった、これで世界的に有名になった」というのではなくて、その国の人たちが文化に対して関心を持つために、そして特に貧困の著しい国の識字率を高めたり、文化を向上させるためにあると、理解すべきだと思います。

その国の、人々がしっかりと文化を理解し、それを守っていくという意識が高ければ、わざわざ世界遺産にする必要がないのかも知れません。

文化とは絶対的な価値

文化庁の来年度のキーワードは「文化を考えてもらい、それによって元気を取戻してもらう』ということです。 教育水準の高い日本人が、はたして文化の意識が高いのか疑問です。

『文化を考える』ことは経済一辺倒で突き進んできた日本人には特に重要なテーマだと思います。文化とはオペラを観るといったものだけではなく、もっと生活に根ざしたものなんです。

文化の反対語は経済だと思います。経済的価値はなくても価値があるものこれが文化です。

たとえば、『こどもは地域の宝』と考え、地域全体で育てるようにすること。お年寄りに席を譲ること。これだって立派な文化です。

これからは「経済よりも心、文化」の時代になっていくべきです。主観、絶対で判断するのは文化です。ところが最近、相対的(非文化的)な考えに毒されてしまっていることが多い。

東大に何人入るかで良い学校、悪い学校が区別されるのはおかしい。

例えば、農業の勉強をするなら、平塚農業高校は日本一のすばらしい学校だと思っています。今、一般的に行なわれている学校の評価は相対的、これは文化的とはいえません。

学力テストが下がったからといって、そんなに深刻にならなくてもいい。その子らしさを伸ばしてあげることが大切なんです。画一的な教育から柔軟な教育へ ゆとりの教育が学力低下をもたらすという人がいます。

確かに授業の日数や時間は削減されましたが、学ぶ意欲を伸ばすことに力を入れるために「総合学習」ができました。身の回りの色々なことから、考える力、学習意欲を向上させる工夫が必要なのです。

また、指導要領にないものでも授業にとりいれる。ある小学校では点字や手話等を教え、子ども達も大変興味を持って学んでいるようです。今までの画一的な教育では出来なかったでしょう。 詰め込みで覚えさせようとしても覚えない。ところが子どもたちが自分で興味を持てば、自然に身についてしまう。ここのところが肝心だと思います。

全ての大人たちが子どもは世界の遺産として育てて欲しい。 「モノの豊かさよりも心の豊かさ」これが文化です。その文化を愛する心。見返りを求めないで人のために尽くす心。自分を磨く心。これらが分かったとき始めて、世界遺産の意義がわかるのではないかと思います。(文責 馬渡)

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