新刊紹介

『チューリップ タッチ』

アン・ファイン作 灰島かり訳

舞台は英国。チューリップは、暴力をふるう父親の下で母親もかばってはくれないような貧しい農家の娘。父親が支配人となるべくその近所の長期滞在用のホテルに越してきたナタリーは、誰からも好かれず、学校でも厄介者扱いをされているチューリップに魅せられてしまい、悪意あるいたずらを際限なく繰り広げそれはエスカレートの一途をたどり、放火に行き着く。中学校進学前後の二人の少女たちが共有するその闇の世界が、ホテルの象徴する明るい穏やかな人々の普通の世界と同時進行する中ナタリーはやがてチューリップの呪縛から解きはなれる時を迎える。ホテルが放火され、燃え盛るなか、物語は大団円を迎えるのだが、この炎が破壊し、またそこから再生するものは何?この二人の少女が過ごした少女期から思春期への親と言えども窺い知れぬ心が、人間性が、育っていく時代を作者は丁寧に描き出す。評論社刊。230ページ。1500円。(岡野)

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