6月:バラの花かおる中欧の世界遺産をたずねて
プラハ、ザルツブルグ、ウィーン、ブタペスト

 中欧3ヶ国を通じて印象に残ったのは、穏やかで端正な自然の中に築かれ、手入れも行き届いた都市や村落に人々が続けてきた暮らし。その風土・自然は荒涼とした土漠、或いは南方の豊穣すぎる自然ではない。人々の生活や街の中心にあったのがキリスト教。今回
訪れたのは殆どが教会建築と王宮・宮廷を中心とする都市、それもハプスブルグ家ゆかりの街々。

西と東を分かつハプスブルグ家
 オーストリアの位置上、ハプスブルグ家がヨーロッパとイスラム圏やスラブなど東・北方とを分かつユーラシア大陸の文化的政治的分水嶺として何世紀もの間そびえていたことを実感。ウィーンは西欧のちょっと端っこの街、と言う認識だったのだが。とんでもない、ウィーンは政治的芸術的にも発信地かつ目的地即ち中心だった。その頂点に立ち、パトロンとなって華やかな文化芸術を支えたのが教会と王侯貴族。

EUの存在を目の当たりにして
 モーツァルト生誕250周年で沸き返るザルツブルグでは彼の生家をはじめ路地には観光客が溢れ、どこも行列。ただ米国人らしき人影は殆ど見当たらない?ブタペストの民族音楽と舞踊のショウを楽しめるレストランで最も多かった観光客はスペインの人々。空港でも"EU域内"という通関前は列も短い。それにチェコでもハンガリーでも、自国の通貨以外にもユーロも流通。

 

ソ連崩壊後、旧東欧諸国のEU加盟が実現した今、新たな国民・民族・市民の交流・共同統治が始まっている。昔の「〜帝国」という形ではなく。他方、長年懸案事項とされていたイスラム圏の国トルコの加盟が、昨年EU側により見送られた。トルコはイスラム圏とはいえ、イスラム教を国教とはしていない。それでもやはり宗教の壁は厚かった、ということか。

世界遺産は人間の過去と未来
 今回訪れた国々は長年戦争と政治的イデオロギーに振り回されてきた地域でもあったが、それゆえに、一層と言うか人々の忍耐強い努力の結果が少しずつではあっても実を結び始めており、手をつなぐ人々の平和が永からんことを祈らずにはいられなかった。

   

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