洪水にも負けない たくましきカンボジアの人たち(前編)
こんにちは、木村です。雨季真っ只中のカンボジア・シェムリアップ州では、インドシナ半島に押し寄せた台風の影響を受け、9月に二回の大きな洪水に見舞われました。
土砂降りの雨が来る日も来る日も降り続いたため、シェムリアップ市の真ん中を横断する川が氾濫し、行き場を失った水は日本ユネスコ協会連盟カンボジア事務所周辺にもじわじわと迫ってきました。
9月24日、私たちは今年度新たに寺子屋を設立することになったアンコールトム郡のタトラウ村に向けて車で出発しました。この日、タトラウ村では寺子屋運営委員会(地域を代表して寺子屋の運営を行うグループ)を設置するためのコミュニティ選挙が予定されていました。ところが、数日間降り続いた雨はこの日いっそう激しさを増し、目的地に向かう途中の道で洪水が発生し始めました。
村に続く赤土の道もたちまちに水嵩を増し、とても選挙を実施できるような状況ではありません。村長との話し合いの結果、私たちは引き返すことにしました。
村の人たちはどうしているのでしょう。道路わきにふと目をやると、子どもも大人も村の至るところにできた”池”に飛び込んで、網漁をしているではありませんか。
ある少年は手作りの竿を使って釣りをしていました。「学校は?」と聞くと、「本当は今週から新学期(新しい学年の授業)が始まる予定だったけど、この雨で延期になった」と言います。
水の中で網を使って魚を採ろうとしている少女に「ずっと水に浸かっていて寒くない?」と声をかけると、「一日中水の中にいたって大丈夫」と元気な声が返ってきました。
村の家々はほとんどが高床式なので、かろうじて浸水を逃れていましたが、さすがに家畜を家に上げることはできず、水牛たちは水の中でじっとしているしかない様子でした。
水浸しになってしまった農地には、もちろん誰も耕作に出かけることはできません。「この雨があと数日降り続けば、植えた村中の稲が台無しになるだろう」と村長は語っていました。 (後編に続く)