未来遺産運動futureheritageitem

「プロジェクト未来遺産2025」に5プロジェクトの登録が決定!

2025.12.23

日本ユネスコ協会連盟は、2009年から日本の豊かな文化や自然を、地域の“たからもの”として100年後の子どもたちに伝えていくことを目指す未来遺産運動を行っています。

この度、地域の文化・自然の保全・継承に取り組む市民の活動を登録する「プロジェクト未来遺産2025」が決定しました。

今年度は、全国から33件の応募があり、書類選考を通過したプロジェクトに対し、専門家による現地調査を実施し、12月4日(木)に開催した未来遺産委員会(委員長:西村幸夫/國學院大學 観光まちづくり学部 学部長)での最終選考を経て、以下5プロジェクトの登録が決定しました。

今後、各登録地において登録証伝達式を開催する予定です。

「プロジェクト未来遺産2025」登録プロジェクト紹介


盲目の女旅芸人「瞽女」の歴史文化の発信と雁木町家の保全

団体名:NPO法人高田瞽女の文化を保存・発信する会

エリア:新潟県上越市

■プロジェクト概要
「瞽女(ごぜ)」とは、三味線や唄を披露して各地を巡りながら生計を立てていた盲目の女性たちのことで、全国に存在が確認されている。「高田瞽女」は、幼児期に親方の元に弟子入りし、厳しい掟のもとで年間300日以上、上越から信州の村々を巡業していた。瞽女の来訪は、農村の娯楽の一つとして歓迎されたと言われている。NPO法人高田瞽女の文化を保存・発信する会では、高田瞽女も暮らしていた雁木町家と同じ構造の町家を保存・活用し、瞽女の暮らしを追体験できる「瞽女ミュージアム高田」を開設した。斎藤真一作品の「越後瞽女」や、触覚や聴覚を用いたユニバーサルな展示を行うほか、瞽女唄の演奏会やゆかりの地を巡るバスツアー等を開催し、高田瞽女の歴史・文化の発信を行っている。

赤沼の獅子舞を未来へ 農村の文化芸能を伝える繋げる

団体名:赤沼民俗文化財保存会

エリア:埼玉県春日部市

■プロジェクト概要

赤沼獅子舞(春日部市無形民俗文化財)は、一人立三頭獅子で、獅子舞と神楽が共存する。豊作や無病息災を祈願して、春と秋の例大祭で奉納されてきた。昭和36年(1961年)頃に、担い手不足により一時中断したものの、赤沼民俗文化財保存会が中心となり、かつての担い手とともに昭和61(1991)年頃に復活させた。復活の過程で、女性や子どもたちの参加を集い、平成10年(1998)頃から開始した「子ども獅子舞」では、子どもたちだけで獅子舞を披露し、小学生を中心に10名の子どもたちが活躍している。また、若手の女性の舞手も誕生し、新しい形で伝承が進められている。

村の伝統を未来へつなぐ 大鹿歌舞伎の保存と継承

団体名: 大鹿歌舞伎保存会

エリア:長野県下伊那郡大鹿村

■プロジェクト概要

大鹿歌舞伎(国重要無形民俗文化財)は、江戸時代に旅回りの一座によって大鹿村に伝えられた。素人による歌舞伎上演が禁じられる中、神社への奉納芝居として村の人たちの娯楽として伝承されてきた。大鹿村のみに伝えられた演目や演出が見られ、芸能史の観点からも重要な地芝居である。大鹿歌舞伎保存会では、春と秋の定期公演の上演のほか、村内の小中学校において歌舞伎の伝承を進め、特に、中学校では50年前に歌舞伎クラブを立ち上げ、子どもたちへの継承に取り組み、卒業生から多くの伝承者を輩出している。役者、太夫、舞台、着付等の技術や大道具や衣裳、かつら等を自前で保有し、村をあげて継承する体制が整えられている。

日本遺産/国指定天然記念物「琴ヶ浜」鳴砂の保護・保全活動

団体名:馬路おこし会

エリア:島根県大田市

■プロジェクト概要

「鳴砂(なりすな)」は、歩くと音が鳴る砂のことで、琴ヶ浜は日本有数の鳴砂浜の一つとして国の天然記念物に指定されている。石英粒を多く含み、外から力が加わると粒子同士が擦り合うことで音が鳴ると言われている。汚れが付着すると鳴らなくなるため、長年にわたる住民たちの清掃活動によって砂浜は綺麗な状態が維持されてきたが、過疎高齢化が進む中、馬路地区の14自治会を統合した自主運営組織として、琴ヶ浜の保全の中心的な役割を担う馬路おこし会が発足した。同会は、積極的に地域内外の学校や企業、団体等の参加を集い、砂浜と周辺河川のマイクロプラスティックの除去やゴミ拾い等の定期的な清掃活動を進め、琴ヶ浜の保全を主軸とした地域振興を目指している。

団体名:土江子ども神楽団

エリア:島根県大田市

■プロジェクト概要

土江地区に伝わる約300年以上の歴史があるとされる子ども神楽。歳神が祀られた仮の社に集う「仮屋行事」という大田地方の正月行事の中で、集落の子どもたちが大人たちに成長する姿を披露するために舞われていた。少子化の影響で平成7年(1995年)に一度途絶えたが、復活を望む声に応えて平成12年(2000年)に再興した。土江子ども神楽団では、仮屋行事での披露のほか、市内各地で年間60回を超える公演を行っている。現在、小学1年生から中学3年生までの約40人が所属し、子どもたち自らが舞・奏楽・神楽団の運営を担っている。大人の神楽を参考に新しい演目や振り付けを考え、上級生が下級生の指導を行い、子どもたちによる継承が進められている。


未来遺産委員会委員長 総評

西村 幸夫

國學院大學 観光まちづくり学部 学部長

今年度に応募のあったプロジェクトは、全体として、身近な文化や自然環境を守るだけでなく、地域振興を視野に入れた素晴らしい取り組みが多い印象でした。最終的に選ばれた5プロジェクトは、少子高齢化に直面する中で、いかに地域の文化・自然資源を維持し、継承していくかという創意工夫が詰まったモデル性の高い活動でした。地域の歴史と風土の中で育まれてきた文化や自然を守り、伝承するということが、地域コミュニティの結束力を強固にすると改めて教えてくれる「プロジェクト未来遺産」が選ばれたと思います。

未来遺産運動では、多くの方々に身近な地域や全国各地の「プロジェクト未来遺産」に関心を持っていただくことで、地域を越えた新たなつながりを生み出し、全国に応援の輪が広がることを目指しています。

活動を支える・参加するParticipation to support

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